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螢は火を操る焔師だ。ただ輝気と昏気を合わせ持つので、うまく力を操れない。
そのことで本人は矜持をいたく傷つけられている。安心させるように髪を撫でてやった。
「心配するな。なにも怖くはない」
こいつはまだ生娘だ。どこか純粋な宝玉を汚すようで後ろ暗かった。
けれどかつて螢は俺を好きだと言ってくれた。どうしようもなく穢れている、この俺なんかを。
だからどうしても守りたかった。俺と同じ目に螢を合わせたくない。
それには心臓に俺の所有紋を刻んでしまうのが手っ取り早かった。
「あっ……」
細心の注意を払って、寝具の上に押し倒す。それから手早く黒上衣を脱ぎ捨てた。
青白い光に褐色肌の半身をさらす俺を、螢は不思議なものでも眺めるように見つめている。
「どうした、螢」
「え、だって。すごい……から」
「なにが」
「う……、たたら、どこで身体、鍛えたの」
思わず吹き出してしまった。
「いやか、あまり筋肉質なのは」
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