はじめての温泉

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 その施設がなんて名前だったかは忘れた。慣れない類の施設に僕らはおどおどしながら、受付を済ませてエレベーターを上がる。風呂は上にあるらしい。すっかり朝になっていた。男湯女湯に別れ、いざ風呂へ。そこで最上階に風呂がある意味を悟る。海が、見えた。  そんな開放感も手伝ってか、僕はちいさなちんちんをぷらぷらさせながらはしゃいだ。かなり広い浴槽、空いていたので泳いだ。今は泳ぎませんよ、ダメです。  なんだか今までちんこ隠して生きてきたのが馬鹿らしくなった。なにが「ちんこは好きな女にしか見せたくない」だよ。今なら渋谷のスクランブル交差点を下半身だけ裸で歩ける気がした。眠気や疲れはすっかり癒えた。  風呂を上がって彼女と落ち合い、お互い「気持ちよかったねー」と感動を分かち合い、少し休んでからすっかりリフレッシュして横浜まで帰った。  けれども僕らはその後一緒に温泉に行く事はなかった。  僕らは別々になる公衆浴場より、どちらかのアパートかラブホの風呂に一緒に入って口臭欲情する事を選んだのだった。  それから何年過ぎただろう。僕の温泉ライフは、この腐れ縁を断ち切り後に結婚する次の彼女と育まれて行った。
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