可能性の大樹

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 「長たらしい言い訳をし、難しいだけの言葉を連ねる貴様に誰が関心を持とうか。」  「…。」 黙り込む飯田に観察者が続ける。  「人間とは怠惰な生き物だろう。全てを簡略化し苦労を拒む。故に結果のみ。そうなれば当然国民の不利な政策をする貴様は悪者になる。過程など知るものか。」  「…では!どうすればよかったのだ!?若者の政治離れが加速する中で私はー」  「…そもそも政治離れという事実はない。」  「―!なんだと…?」  「インターネット社会における若者の情報力は絶大だ。注目の多い貴様のことは嫌でも目に入るだろう。」  「…しかし…!」  「…メディアより自身の目を信じるべきだったな。」 もっともな意見に飯田は何も言えなかった。  瞬間あたりが真っ暗になる。どうやら飯田は諦めてしまったらしい。まぁ、それも自由だ。  観察者がその場を去ろうとしたところ飯田が口を開いた。  「教えてくれ…私は…どうすればよかったのか…。」  「…ここにいた記憶は残らない。知ってどうする。」 返答はなかった。しかしこの言葉は飯田が秘め続けた本心なのだろう。観察者は再び口を開いた。  「行動力、決断力があるのは若者だ。そして…これからを創るのは同じく若者だ。」 言葉の意味を理解した飯田が見上げるとそう言った観察者の姿は既に無くなっていた。  その時、自身から一本の光の道が伸びているのに気が付いた。飯田はその道をゆっくりと進んだ。
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