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人類の発展、進化、運命、それら全ては可能性の上に成り立っている。一つの可能性は新たな可能性を生み出し、いくつにも分岐する。可能性の数だけ広がり、歴史の長さだけ伸びるそれを私は"可能性の大樹"と呼称している。
観察者である私はそれらすべての道を観察し、時にきっかけを与え、時に破壊する。これは無二の私の娯楽だ。これだけの道があるとそうやすやすと壊してしまいたくない道、いわゆるお気に入りというのはもちろん存在する。
「新たな可能性か。」
最近、人の往来の激しい道に新たな可能性の枝が生まれようとしていた。新しい道を切り開くためにはそれぞれ道具を持ち寄る必要がある。夢のスコップ、才能のツルハシ、知識のランプ…先駆者はそれらを残し、後進者に託す。それは当然この道も同じことだ。
地面に散らばる道具を手に取ると刻まれた言葉が目に入った。
「ほぅ…。」
この道でここまで人が集まるとは。
興味の湧いた観察者はこれから大きく動こうとしている可能性の世界に降り立った。
「飯田内閣の支持率は低下の一途を辿って―(プツン…」
支持率…またそれだ。こんなものメディアの情報操作に過ぎないというのに…。政治に関心のない頭の悪い若者はメディアの情報を簡単に鵜呑みにする。そうなれば、また支持率は下がる。私がどれだけ苦労しようが知る由もない若者がまた下げるのだ!そのうえ―…
「当たり前だろう。」
突然背後から聞こえた声に飯田は思わず振り返った。そこには黒いローブに身を包む怪しげな男が立っていた。
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