見る人と見られる人

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ある晴れた穏やかな昼下がり私は 散歩がてら、ぶらぶらと歩いていた。 ふと私は、一件の洋服屋さんで 足を止める。 何の気なしにお店に入ってみると そこには、様々な洋服が並んでいた。 老若男女問わず様々な年代の人の コーナーの服があり ベビー服 ティーンエージャーの 服や婦人服 紳士服など どの年代の 人も楽しめる様になっていた。 さらには、服を着ているマネキンの ポーズも独特で後ろを向いていたり 手をグーにして振り上げていたり 大股で足を上げて走っているみたいな ポーズのマネキンもあった。 マネキンの表情も、大口を開けていたり 目を見開いていたり他の店では なかなか見られない凝ったデザインの マネキンが多かった。 他のお客さんもその独特のデザインの マネキンに見入って足を止めてる者が 多かった。 そう言えばこの洋服屋さん店員さんを 見掛けないなあ.... 最近流行っている無人のお店らしい 支払いも自動らしくレジカウンターにも人の気配は、無かった。 そこも変わっていて、私は気に入っていた。 しばらく服に見入っていたけど.... 途端に一人のお客さんの大声で雰囲気が変わった。 そのお客さんは、マネキンの前で 尻餅を付き 譫言のように「嘘よ!」と叫んだ。 そうして、「あ、あ、....」と呟き 始め 涙まで流し始めた。 どうしたんだろう? 一体何が起こっているの? 私がポカンとしていると 突然 館内 アナウンスが流れ始めた。 『ご来店の皆様 閉店のお時間に なりました 直ちに店内から退室して 下さい』そんなアナウンスの言葉と  共に『10 .9.8.7』と言うカウントダウンのアナウンスが聞こえて来た。 私は、頭の中がパニックになり 怖くなって駆け出した。 カウントダウンは、早口になり まるで私達を急かす様だった。 そして....『0!』と言う言葉が聞こえ 私は、なんとかぎりぎり自動ドアを 潜り外に出た。 でもまだ自動ドアを潜ってない人達が 居たその人達を見て私は恐怖で目を 丸くした。 何とまだ店内に残っていた人が走った 態勢のまま動きが止まって居たのだ さっき大声で嘘と言っていた人も 時が止まったかの様に走った姿勢の まま止まって居た。 その直後突如店内の床から黒い影みたいなのが現れ人型に影が形成された。 そうしてその影になった人型は、 動きが止まった人達を抱え始め 店の空いたスペースにその人達を 並べ始めた。 そうして着ていた服を脱がせ流行りの デザインの服を着せ始めた。 装飾品や小物も付けて持たせて 洗練されたマネキン人形が次々と 出来上がって行った。 外に出た人達は、もう見たくないと 言う風に顔を背け走り出した。 私もそれに倣い駆け出した。 そして、その悪夢の様な出来事から 数日後 私が見つけた洋服屋さんは まるで、最初からそこには無かったかの様に消えて居て空き店舗になっていた。 私は、怖くなってその道を二度と 通らなくなった。 もちろんあの後動かなくなった人達が  どうなったかも考えず、忘れる様に私は、日常に戻った。 一時の悪い夢として私の記憶から消えて行った。
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