殺笑み

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「せ、先輩。お金はいつごろ用意できそうですか」  しつこいやつだな。返すと思ってんのかよ、このバカ。俺にそんな話が通じるわけねえだろ。弱いやつはな、黙って踏みつけにされてればいいんだよ。 「五十万だったな」 「ええっと、おことばですが、高校のころからちょっとずつ貸していたのを合計すると六十三万円です」 「なんだ、細かいやつだな。切りよく五十万にしとけ。グダグダ言うと妹襲うぞ。たしか高二だよな」  ここでわざと俺はニヤリと笑い、目から殺気を放つ。すると案の定だ。 「ムチャ言わないでください。あの、それではまず五十万円、お願いします」  康太は卑屈な笑みを口もとに浮かべ、頭をさげた。  そうだ。おまえはそうやって、俺に愛想笑いをしていればいいんだ。  おおい、と俺は大声をあげ、店員を呼ぶ。 「生中二つと唐揚げ二人前。さっさと持って来い」 「先輩、僕は僧侶なのでお酒や肉は」 「じゃあテーブルに置いとけよ。俺が飲んで食ってやるからよ」  料理と酒がならんでも、康太は座っているだけだ。項垂(うなだ)れて動かない姿は、おあずけを食らった犬にそっくりだ。俺はジョッキに口をつけてから、今日本来の目的に取り掛かった。 「おまえんちの寺って、除霊で有名だよな」 「あの、ちょっと違いますけど、とりあえず一般の方々には、本当にお祓いのできる寺として、名が知られています」 「なんだよ、まだるっこしい言い方だな。とにかくな、最近、呪われてんじゃねえかって気になることがあるんだ」 「えっと、そういう話でしたら、父にしてください」 「おまえ、なに冷たいこと言ってんだ。先輩が困ってんだから、助けるのは当たり前だろ。常識ねえのかよ。黙って聞け」
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