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「そのとおりや。テメエを殺すためになぁ。こいつは――」シュウの心を読み取り、腫瘍のように頭半分に融合した機械を指さす。「増幅機とかいうらしい。精神能力をマックスまで引き出すんや。おかげでテメエのニオイを嗅ぎ分けた。ひと月かかったがな」
「葵がやってた事と同じだ。負担で躰がボロボロになるぞ」
テロを率いた葵は、ある少年の超能力を最大限に引き出した。結果、力を搾り尽くされた少年は、急速な老衰により命を失う。
「ボロボロになろうが、テメエさえ殺せればいい。葵のババアはくたばったそうやな。もうババアなんか超えている。今のワシの能力はよォ!」
凄まじい衝撃波がシュウを襲った。回避が間に合わない。
突風に飛ばされたように、ビールケースの山積みに叩きつけられた。崩れたケースと空き瓶が降り注ぐ。路面でガラス片が散った。
鋭利な衝撃波だ。数百のカミソリを浴びたように、服はズタズタに裂けていた。裂け目から血が滲む。顔も生ぬるいものが伝う。
「どうや、ニイチャン。ワシは無敵になったんじゃ。あは、あははは」
高揚感に酔っている。目つきが尋常ではない。瞳孔散大――あの金属の腫瘍から、覚せい剤系の薬剤が投与されている。おそらく。
路地の先からやって来た通行人が、こちらの様子を見るなり回れ右した。
ブーステッド対超能力者。変異者同士のケンカは、側に居るだけで命に関わる。
法案が提出され政府広報が効いて、ブーステッドマンは超能力者と並ぶ悪役だ。
変異者等規制法──人類を脅かす能力を有する変異者は、隔離され治療される。
実際のところは、幽閉され殺処分される、だ。
加速して反撃に移ろうとしたが、躰が重い。自由を奪われている。まるで蜘蛛糸でも巻き付いたように。
念動力だ。得意の加速攻撃を封じている。
「テメエに念を巻き付けた。動けんやろ。動けたところでスローモーションや。さあ、動けん鈍亀に一発いくでぇ」右掌を上向け、空気を掴む形で持ち上げる。
塀のコンクリートブロックが一つ、目地を割って宙に浮いた。
次の瞬間、ブロックは弾丸と化して飛ぶ。速さを失った亀サンめがけて。
シュウは仮想剣カマイタチを起動。右手刀に超高速振動の透明な刃が浮く。高速ブロック弾をひと薙ぎで粉砕した。その反動で倒れる。
「そうやって、いつまで逃げられるかな?」枕木の額に青筋が膨れ上がる。
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