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「酷い目に遭ってるな、裏公務員サン。あんなに滅私奉公したってのに」皮肉めかして言う。「これが国家ってものだ。正体がわかったろう」
「相変わらずアナーキーだな。オレはイデオロギーは語らん。所詮、人間のやることだ」
「修羅場をくぐった男の言葉には重みがあるね。で、これからどうするつもりだ?」
「アンタの仲間にでも入れてもらえたら、ありがたい」
コクマーは唇を歪める。「ホントはマザーと連携したい。ところが先方は知らんぷりときた。違うか?」
「さすがの情報力だな」舌を巻く。
他人の腹の中まで知っている。ネットを神経系のように使い、政府をきりきり舞いさせる集団──〈Wake up!〉の底力を思い知る。
「まあ、しばらくウチに居ろよ。状況が好転するまで」
「助かる。まさかオタクに助けられるとは思わなかった」
「にっくき幸福教団を潰せたのは、景宮 周のおかげだ。それに、手のひら返しで政府の敵にされた。ボクたちは仲間さ」そう言って笑った。
少しして、隠し通路を通って革ジャンと女性スタッフが戻った。買い込んできた食料が机に並んだ。
二人は共に20代。革ジャンはジャック、女性はカスミと名乗った。
弁当や惣菜で空腹が充たされ、ようやく人心地がつく。大勢での食事は心が和む。
コクマーがPCでテレビを受信した。正午のニュースが始まる。
トップニュースはECHIGOYAのスキャンダルだ。桂現社長の解任。これを見せたくてコクマーはニュースに合わせたのだ。
失踪中の桂 勉は業務上横領の疑いで社長を解任された。横領は巨額で、同じく失踪中の妻子とともに国際指名手配がなされた──
「何でもありだな」あからさまなでっち上げに、ため息が出る。
「人類は自分より強い者の存在が許せないからな。相手が爆弾を100発持っているなら、101発持ちたくなるのが人類だ。自分たちを脅かすモノなど居ない方がいい。自分たちと異なる者はとりあえず排除しろ、ってことになる」コクマーはニヒルに言い放つ。
食事が終わると、カスミがコーヒーを淹れてくれた。
彼女はカップを両手で包むようにして口に運び、切れ上がった目でシュウの顔を見つめる。「アンタがシュウさんか」
シュウは小首を傾げた。「何処かで会ったかな?」
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