02 変異者等規制法

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     *  同時刻。大阪新都庁総務部、庁舎管理課。名ばかりの事務室の裏にゼロ課連絡室は隠れている。  そこを知って訪ねる者があった。岩のような躰をダークスーツに収めた巨漢二人。  ファイルが詰め込まれた棚ばかり並ぶ室内へ入ると、来訪者は壁の一面に向き呼びかけた。 「監察です」   胸には目立たぬバッジが留めてある。それが、身分を証明するコードを暗号化発信する。  ガチ、とロック解除の音がして、ノブもない壁面がスライドする。  5メートル四方ほどの奥部屋が現れた。  パーテーションで仕切られた先のデスクに、ゼロ課連絡室チーフ――公方(くぼう) 未有(みう)の姿がある。  赤いアンダーリムのレンズ越しにたちを見上げた。サイボーグ特有の分厚い胸板を。 「監察なのに事務屋サンじゃないのね。アナタたち武闘屋サンでしょう。書類仕事なんてわかるの?」  双子のように似通った岩男たちはそろって頬を歪めた。「聞き取りには別の場所が用意されています。ご同行願えますか」 「ウチの報告に疑義でもあったのかしらね」未有は席を立つ。  室内は防諜のため完全密封され窓もない。唯一の出入口は岩男たちが塞いでいる。 「えらいサンの前に出るなら着替えたいわ。一度家へ帰してくれる?」 「それはできない相談ですよ、公方チーフ」左の男が前に出た。 「そう。じゃあ、で帰るしかないか」  つまらないジョークを聞いたとでもいうように、厚い唇が曲がる。ゴツイ手が未有に伸びる。  透明なマニキュアを施した指がアンダーリムを外し、天井へ(ほう)った。  男の視線が赤い軌跡へ逸れる。  男の腕を巻き込むように未有は投げを打った。巨体が回転し、叩きつけたデスクが割れた。中指を出し気味に握った拳がこめかみを強打する。寸分の狂いもない急所突きに、岩男は昏倒した。  放った眼鏡が落ちてくる。華奢な手がふわりと受けた。 「これ、お気に入りなの。限定品だし」もう一人に微笑みかける。「ワタシがただの事務職だと思った?」 「その加速……ブーステッドなのか」巨体がたじろいだ。速度が圧倒的に勝ると知っている。速度差の前に腕力の優位など消し飛ぶ。  任務遂行のため、それでも岩男は腕を拡げ突進してきた。捕らえてさえしまえば、ゴリラ顔負けの怪力で絞め落とせる。  (かわ)すと踏んだ男の裏をかいた。真正面へ飛び込む。正面衝突の瞬間、空中前転。そのために切り込まれたようなスカートのスリットが割れ、形の良いふくらはぎが弧を描く。踵がカウンターとなって男の鼻柱を砕いた。  
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