ピースサイン

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見つけた 彼女だ 風が少しだけ暖かくなった春に 駅前の交差点の向こう側で 友達らしい女性と何か話しながら 信号待ちをしている彼女を見た。 僕は彼女を知っている あれは2年前の 今よりまだ風が冷たい頃 その日、僕は救急隊員として勤務していた 夜、9時前に 母親からの救急要請が入った 「20才の娘が痙攣をおこしてる」 痙攣発作は持病で起こる事も有るので、収まるまで様子を見ることも有るのだが、初めての発作らしく、 母親は直ぐに119番に電話したようだった。 到着すると発作は治まっていたが、 原因がわからないので、母親は病院への搬送を希望した。 彼女はリビングのソファーに座って、 我々をじっと見ていた。 隊長が依頼を受けた経緯と状況を説明しても何も答えない。 ソファーに座り直したり、ブランケットを掛け直したりの動きはしても、母親が「病院に行こう」の声かけにも応えない。 少しだけ怯えを含んだ真っ直ぐな目で前を見つめている様子に、少し違和感を覚えた。 家族の要望が有っても、成人している本人の同意がなければ、病院へ搬送する事は出来ない。 15分以上経過して、どう対応しようかと考え始めた時に、突然立ち上がり 「病院へ行きますか」の声かけに頷いた。 救急車に乗り込み、病院に向かう途中で母親と言葉を交わす様子はそれまでと違い、とても普通に見えた。 病院に搬送すると任務は終わる。 僕はそれから、時々あの真っ直ぐな彼女の目を思い出していたけど、任務で知り得た情報を私用で確認するわけにもいかず、そのまま日々は過ぎて行き、また会いたいと思いながら、どうする事も出来ずにいたのに 気がついたら、彼女に話掛けてた 「あの・・・」 彼女はあの時と同じ少しだけ怯えを含んだ真っ直ぐな目で、僕を見た。 ただ違うのはその目は彼女の意思で僕に向けられている。 fin
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