渚、本当の気持ちを隠す

6/6

160人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
湊はしばし顔を強ばらせ、やがて無表情になり大きくため息をついた。 「渚は俺と同じ気持ちなのかと思っていたけど、どうやら俺の自惚れが過ぎていたようだな。」 「・・・え?」 「わかった。会うよ。その女と。渚おすすめの優良物件なんだろ?」 「・・・うん。」 「たしかに俺が望む条件とぴったりだしな。誰かさんと違って。」 「・・・・・・。」 「その堀内さんとやらの電話番号を教えろ。俺が話つけるから。」 「・・・わかった。」 渚はカバンからメモ用紙を取り出すと、そこに美和子の携帯番号を書いて湊に手渡した。 湊はそれをひったくるように掴み取ると、財布から万札を一枚テーブルに置き、ジャケットを羽織り立ち上がった。 「帰る。」 それだけ言い残し、湊は足早に店を出て行き、渚はその後ろ姿をただ悄然と見送った。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

160人が本棚に入れています
本棚に追加