渚、チーズケーキに舌鼓を打つ

1/4

159人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ

渚、チーズケーキに舌鼓を打つ

だからどうしてこうなった・・・ 渚は引きつった笑みを浮かべながら、チーズケーキを頬張る目の前の奈央をみつめた。 フランス料理のフルコースを食べた後だけれど、残すのも悔しいと思い、渚もフォークに刺したチーズケーキをぱくりと口にした。 そしてその瞬間脳内にハープの美しい音色がポロロロロン・・・と鳴り響いた。 「美味しい・・・!!」 そのチーズケーキは濃厚かつしっとりとした味わいで、控えめに言っても今まで食べたチーズケーキの最高ランクと言っていいほどに美味しかった。 ただ、その作り手は最高に気に食わないけれど。 でも食べ物に罪はない・・・そう思い直し、渚はゆっくりとそれを味わった。 その憎き相手はソファで足を組んで座り、新聞を読むふりをしながら渚と奈央の様子をちらちらと伺っている。 フランス料理店で向き合っていた時の湊は、ストライプのシャツに濃紺のネクタイ、そしてオーダーメイドと思われるグレーのジャケットで決めていたが、今はジャケットを脱ぎ捨て、ネクタイも緩めている。 そんなオフの姿も悪くはない。 しかし・・・性格が残念過ぎる。 この男がその端正な容姿を生かせず、いまだにマッチングアプリなどで彼女を探しているのは、きっとその傲慢な態度が原因なのだ、と自分のことは棚に上げて渚はそう断定した。 本当はすぐにでもここから立ち去りたいと思う一方、どうせならこの状況を楽しんでやろうと、渚は半ば自棄になっていた。 奈央はどうして叔父である湊をそんなにも嫌っているのか? 赤坂の高級マンションに暮らしているはずの湊がどうしてここにいるのか? そして奈央の母親は? 日頃から好奇心旺盛な渚の視線が奈央から湊へ、湊から奈央へ、とキョロキョロ動いた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

159人が本棚に入れています
本棚に追加