渚、スイーツは『愛』だと訴える

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渚、スイーツは『愛』だと訴える

毎週月曜日の午後6時半からと水曜日の午後2時からの1時間、渚は奈央へ勉強を教えることとなった。 月曜日はいつも以上に精力的に実務をこなし、残業をしないことに決めた。 水曜日は勤務先スマイル&ピース不動産の定休日なのでなんら問題はない。 そして今日は月曜日。 定時終了時間きっかりにパソコンを閉め、ジャケットを羽織る渚を美々が珍獣を見るような目で二度見して叫んだ。 「毎日の残業は当たり前、もしや会社に寝泊まりしているのではと噂されていた渚先輩が・・・社畜女子として名高い渚先輩が・・・定時きっかりに帰宅なんて!いったいどういう風の吹き回しですか?!」 「もちろん仕事は何よりも大事よ。でもプライベートも大切にしなきゃって今更ながら気づいたの。」 「プライベートって・・・まさか・・・とうとう渚先輩にも彼氏が?」 「まあ・・・男性と会っていることは否定しないけど。」 「渚先輩みたいな毒舌で酒豪な女性と付き合える奇特な男性もいるんですねえ。」 遠慮のない言葉を発する美々の側頭部を渚は人差し指で軽く突いた。 「美々、あなた言葉を慎みなさい?」 「まあまあ。で、どんな男性なんですか?」 美々の問いかけに、渚は待ってましたとばかりに両手を組み、蕩々と語り出した。 「彼とっても可愛いの。素直で繊細ですごくいい男。品があって、でも好奇心が旺盛で・・・しかも家は豪邸なの。彼の家に行くと必ず美味しいスイーツが頂けて、さらに庭にはローズガーデンがあって、そこの薔薇の香りが芳醇で・・・」 「・・・・・・。」 美々は大きくため息をつくと、渚の顔を哀れむように見た。 「渚先輩・・・とうとう妄想彼氏を作ってしまったんですね。そこまで先輩を追い込んでしまった私って・・・なんて罪深い女・・・」 「ちょっと!本当のことなんだけど。」 「はいはい。どうせ韓流スターとか今流行の2.5次元舞台俳優への推し活かなにかでしょ?先輩の趣味に口だしするつもりはありませんから、思う存分楽しんでください。ささ、夢の世界へお急ぎくださいませ!」 「・・・・・・。」 美々に背中を押され釈然としないながらも、渚は自動扉から店を出た。 「ほんとに奈央君はいい男なのに・・・。でもさすがに20歳年下では彼氏として家族や知り合いに紹介できないけどね・・・」 そうつぶやきながら、渚は奈央が待つ屋敷へと急ぎ足で向かった。
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