渚、スイーツは『愛』だと訴える

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「さて、材料を揃えました。小麦粉、バター、卵、お砂糖、生クリーム・・・。ケーキを美味しく作るには、スケールや計量カップを使って正確に分量を量らなければいけないの。そしてバターを柔らかくしたり、小麦粉をふるいにかけたり、生クリームを角が立つまでかき混ぜたり・・・かなりの労力と手間がかかるものなのよ?全部の材料を混ぜ合わせて型に入れオーブンで焼く・・・これも時間がかかるし目を離すことも出来ない。そしてスポンジが焼けたら最後に大事な飾り付けをしなければならない。ケーキは見た目も大事だものね。ケーキ作りはどれだけ美味しそうに見えるかがカギなの。でもそれだけじゃまだ足りない。美味しいケーキを作るにはもうひとつ大切なものが必要なのよ?さて、なんでしょう?」 「うーん。なんだろう・・・ケーキ作ったことないからわかんないや。」 奈央が腕を組み考え込んだ。 「じゃあもう一つ問題ね。どうして湊さんは毎日のように、そんな大変なスイーツ作りをしているか・・・奈央君わかる?」 「それは・・・湊はお菓子作りが好きなんだよ。」 「それだけじゃない。そこに『愛』があるからよ?」 「・・・愛?」 「そう。さっきの答え。それは湊さんから奈央君への『愛』というスパイスがケーキの中には詰まっているの。それがケーキを美味しくする最高の隠し味なの。だから奈央君、今よりちょっとだけ湊さんに優しくしてあげたら、湊さんきっと喜ぶんじゃないかな?」 奈央はきょとんとした顔で渚をみつめ、そのまん丸の目を潤ませた。 しかしその後、照れ隠しをするように大笑いをした。 「あっはははは!」 「なに?なにが可笑しいの?」 「だって・・・そんな大真面目に『愛』なんて言うんだもん。渚、恥ずかしくないの?」 「恥ずかしくないわよ?だって『愛』以外の言葉なんてある?」 「奈央坊ちゃま。ワタクシも湊坊ちゃまからの『愛』を感じてますわよ?お優しい湊坊ちゃまはこのワタクシの分のお菓子も、必ず忘れずに作っておいてくださるのですからね。」 絹が渚の言葉を補足するように言った。 「それじゃ湊の作ったケーキを食べてる渚も、湊からの『愛』を感じてるの?」 「そ、それは・・・」 「ねえ、どうなのさ?」 そう詰め寄る奈央に渚は小さくつぶやいた。 「それは『愛』じゃなくて報酬ね・・・。」
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