渚、まさかの展開に混乱する

2/4

162人が本棚に入れています
本棚に追加
/131ページ
女性は身動きもせずじっと連城家の塀の向こうへ顔を向けている。 そんな時間(とき)が長らく続き、渚は痺れを切らした。 これが男性だったら交番に通報しようとも思ったが、相手はか弱そうな女性。 そのまま放っておいて帰ろうとしたとき、渚の頭に別の考えが浮かんだ。 もしかして身体の具合が悪く、動けないのかもしれない。 だったらこのまま捨て置くのは人間としていかがなものか。 でも余計なお節介だったら。 万が一危ない女性だったら。 「ええい!ままよ。」 渚は心を決め、その女性に声を掛けることにした。 もし危害を及ぼされそうになったら、ハイヒールを脱いでダッシュで逃げよう。 そう思いながら、少しづつその女性へ近づいていった。 至近距離に近づいたその時、渚の目ははっきりとその女性の顔を認識し、そして驚愕した。 それは予想外の人物だった。 「木之内先生・・・!?」 渚に突然声を掛けられた木之内惣は、ビクッと身体を震わせ、渚の顔を見た。 渚は木之内惣との思いがけない再会に、この状況の不可解さを忘れ、喜びの声を上げた。 「あの・・・覚えてませんか?栄文社で本にサインを頂いた岡咲渚です!その節は本当にありがとうございました!私、あの本読むのがもったいなくてまだ棚に飾ってあるんです。」 しかし木之内惣は渚の言葉に何の反応も示さなかった。 「あの・・・木之内先生・・・ここで何を?」 すると思ってもみない言葉が返ってきた。
/131ページ

最初のコメントを投稿しよう!

162人が本棚に入れています
本棚に追加