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大学への入学を機に実家を出るとき、まっさきに頭にあったのは、家族や故郷から離れる寂しさではなく、「ようやくあれから解放される」という安心感だった。
あれ、というのは、幼少期より長年わたしを手こずらせていた奇妙な現象のことで、わたしと一つ屋根の下で暮らす人形やぬいぐるみの毛が、知らないうちに伸びるのだ。
母いわく、最初は人形自体が呪われているのだと思ったらしい。
それはわたしがまだ幼稚園に通っていたころのことで、誕生日プレゼントに女の子の着せ替え人形をもらった。明るい髪色に幼さの残る丸い顔、そして少し垂れた大きな瞳が愛らしいその人形を、わたしはすぐに気に入った。
おままごとだけでなく、食事やトイレに行くときも常に持ち歩いていたため、両親もすぐには気がつかなかったそうだ。
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