クママサ

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　数日後、同じメーカーの新しい着せ替え人形を買い与えられた。両親としては、心移りした隙に、古い方を処分する目論見だったのだろう。しかし、それはうまくいかなかった。わたしが新しい子を気に入らなかったからでは無い。新しい子まで、同じように髪を伸ばし始めたからだ。　

　別のメーカーの人形でも同じで、挙げ句の果てには犬のぬいぐるみさえ、体毛を伸ばしてしまう始末だった。こうなると、両親もお手上げだ。

　伸びるスピードは本体の大きさにもよるけれど、20センチくらいの身長をした着せ替え人形で、だいたい1ヶ月に1ミリほど。同じ期間で人間は１センチくらい伸びると言うから、縮尺的には似たようなものと言える。だから同じように、3ヶ月もすれば前髪がすっかり目を覆ってしまい、その度に丁寧にカットしてあげる必要があった。

　そして不思議なことに、人形たちはわたしから離れると毛を伸ばすのをやめるのだ。一度、県外にある祖父母の家に人形を忘れたことがあり、ちょうどそのころ前髪が目にかかり始めたなあと思っていたから、1ヶ月後に取りに行ったときには、さぞ鬱陶しくなっているだろうと申し訳ない気持ちだったのだけれど、いざ対面してみると、彼女の前髪は全く変わっていなかった。念のために祖父母にも確認したが、切ったりなどはしなかったという。