第一章 会社をクビになりました

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少し長めの黒髪はぼさっとしているが、整えればきっと、かなりのいい男に違いない。 「はぁ……?」 なにを言っているのかわからなくて、しばらく考える。 もしかしてこれは、自殺でも考えていると思われているんだろうか。 「なんか悩みがあるなら聞いてやるぞ。 人に話すだけでも気持ちが軽くなる」 ん、と持っていたエコバッグからペットボトルのお茶を取り出し、彼は差し出してきた。 「ありがとう、ございます……」 それを複雑な気持ちで見つめながらも、ありがたく受け取る。 彼が隣でコーラのペットボトルを開け、プシュッと音がした。 そのままごくごくと勢いよく飲み、ぷはーっと最後に彼が炭酸を吐き出す。 なんだかそれが凄く気持ちよさそうで、気が抜けた。 「その。 ご心配はありがたいんですが、死ぬ気なんてまったくないんで」 手持ち無沙汰にもらったペットボトルを手の中で弄ぶ。 「そうなのか?」 さぞ意外そうに彼は黒縁眼鏡の奥で何度か瞬きした。 「滅茶苦茶深刻そうな顔でため息ついてるし、ずっとここにいるからてっきりそうなのかと」
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