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「……そう、言ってもらえると嬉しいです」
彼の手がまた、ぽんぽんと私の手を叩く。
それで幾分、私が救われた。
「あーもー、お腹空いたな!」
勢いよくベンチから立ち上がる。
彼が話を聞いてくれたおかげで、前向きに動こうという気力が湧いてきた。
お金はないがバーコード払いの前借りで、とりあえずお腹いっぱいなんか食べよう。
仕事が見つからなければ実家に帰ってもいい。
……後輩は今後の幸せを祈るしかできないけれど。
「なんだ、腹減ってるのか」
少し遅れて彼も立ち上がる。
並ぶとかなり背が高い。
背の低い私など、見上げないといけないくらいだ。
「メシ、食いに連れていってやるよ」
高い背を屈めて私の顔をのぞき込み、彼はにかっと笑った。
「え、いいですよ!」
見ず知らずの私に、事情まで聞いてくれてそこまでしてもらうのは申し分けなさすぎる。
「いいからほら、行こうぜ。
俺も腹、減ってるんだ」
促すように彼が、背中を思いっきり叩いてきた。
「あいたっ!」
睨んだけれど彼は涼しい顔をしていてまったく効いていない。
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