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「じゃあ、あれか、高卒新入社員か。
そうだよな、制服じゃないし」
うんうんと彼は頷いていて、私の中でなにかがプチッと切れた。
「もう二十五で、会社でもしっかり後輩指導してたんですが!」
「おう」
食ってかかる私を、彼が両手でどうどうと宥めてくる。
「それは申し訳なかった。
すまない」
真摯に彼は頭を下げてくれた。
それで気が済んだ。
「いえ。
私もよく間違われるので。
その、怒鳴ったりしてすみませんでした」
ぺこんと私も頭を下げ返す。
「いや、いい。
見た目で年齢を判断した俺も悪いし」
しかし彼はなおも謝ってくれた。
もの凄くいい人に見えるのはあの最低御曹司の反動だろうか。
「でも、会社員ならなんで、あんな時間からこんなところにいたんだ?」
「うっ」
彼の疑問はもっともだ。
正確な時間はわからないが、たぶん三時頃からここに座っている。
そして今はようやく終業時間になったくらいだ。
「……か、会社をクビになってですね……」
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