第一章 会社をクビになりました

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「じゃあ、あれか、高卒新入社員か。 そうだよな、制服じゃないし」 うんうんと彼は頷いていて、私の中でなにかがプチッと切れた。 「もう二十五で、会社でもしっかり後輩指導してたんですが!」 「おう」 食ってかかる私を、彼が両手でどうどうと宥めてくる。 「それは申し訳なかった。 すまない」 真摯に彼は頭を下げてくれた。 それで気が済んだ。 「いえ。 私もよく間違われるので。 その、怒鳴ったりしてすみませんでした」 ぺこんと私も頭を下げ返す。 「いや、いい。 見た目で年齢を判断した俺も悪いし」 しかし彼はなおも謝ってくれた。 もの凄くいい人に見えるのはあの最低御曹司の反動だろうか。 「でも、会社員ならなんで、あんな時間からこんなところにいたんだ?」 「うっ」 彼の疑問はもっともだ。 正確な時間はわからないが、たぶん三時頃からここに座っている。 そして今はようやく終業時間になったくらいだ。 「……か、会社をクビになってですね……」
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