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こんなことを告白するのは恥ずかしく、身を小さく丸め膝の上で拳を堅く握り、だらだらと変な汗を掻きながら視線をあちこちに彷徨わせる。
「クビってなにをしたんだ?」
「そ、それは……」
あれは大人げなかったなと反省したところなので、なおさら言いづらい。
「クビとかよっぽどのことがなければならないだろ」
それは彼の言うとおりなだけに、さらに言いにくくなる。
しかし眼鏡の向こうからじっと見ている彼は言わなければ許してくれそうになかった。
「その。
……社長の息子と喧嘩、して」
きっと呆れているだろうとそろりと彼をうかがう。
けれど彼の表情は変わらなかった。
「喧嘩って、なんで?」
彼の目にはバカにするようなところはまったくない。
こんなに真剣に聞いてくれるのならば、私もそれに応えるべきだ。
「後輩が彼に食事を無理強いされて困っていたので抗議しました。
彼女だけじゃありません、ほかにも何人か、彼にセクハラなんて言葉では片付けられない行為をされた人がいます。
それでもう、我慢できなくなりました」
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