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すんでのところで彼氏さんが気づき、一命を取り留めた先輩。
電話の向こうでずっと泣いていた後輩。
もう、あんなのを見るのはごめんだ。
ぎゅっと強く拳を握り込んだせいで、爪が手のひらに食い込んだ。
「……頑張ったんだな」
その言葉が私の胸に染みていく。
不意になにかが、私の頬を転がり落ちていった。
「えっ、あっ」
慌てて目尻を拭うが、それは次から次へと落ちていく。
「あっ、その」
「うん」
彼の手が伸びてきて、私の拳を握った。
温かいそれに、気持ちが一気に決壊する。
「うっ、うわーっ」
みっともなく子供のようにわんわん泣いた。
そんな私の手を、彼は黙ってじっと握ってくれている。
しばらく泣いて気持ちがすっきりし、ようやく涙は止まった。
「落ち着いたか」
慰めるように私の手を軽くぽんぽんと叩き、彼が離れる。
「はい。
すみませんでした」
「いや、いい」
まだ鼻をぐずぐずいわせている私に彼は首にかけていたタオルを渡しかけて、やめた。
なんかそれがおかしくて、少し笑っていた。
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