第一章 会社をクビになりました

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「今ならあれは間違ってたってわかるんですけどね」 泣きすぎて喉が渇き、ペットボトルを開ける。 すっかりぬるくなったお茶は優しく私の喉を潤していった。 「間違ってた?」 彼の声は怪訝そうだ。 たぶん、誤解をしている。 「はい。 カッとならず、もっと冷静に抗議するべきでした。 それでダメなら、しかるべきところに訴えればよかった。 じゃないと……」 視線を地面へと落とした。 御曹司の横暴は続き、被害者は出続ける。 「そうだな。 でも君は、許せなかったんだろ?」 「そう、ですね」 わかっていても、あの時間に戻り後輩から今にも泣き出しそうな、必死に縋る目で見られたらやはり、カッとなって食ってかかっている自信がある。 「君は頑張った、偉いよ」 「偉くなんかないです」 彼は褒めてくれるが、私はただ考えなしに御曹司と喧嘩をしたに過ぎない。 もしかしたら私のせいで、さらなる被害者が出たのかも。 そう思い至ると身体が冷えた。 「少なくともその後輩はきっと、君に感謝しているよ」
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