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「今ならあれは間違ってたってわかるんですけどね」
泣きすぎて喉が渇き、ペットボトルを開ける。
すっかりぬるくなったお茶は優しく私の喉を潤していった。
「間違ってた?」
彼の声は怪訝そうだ。
たぶん、誤解をしている。
「はい。
カッとならず、もっと冷静に抗議するべきでした。
それでダメなら、しかるべきところに訴えればよかった。
じゃないと……」
視線を地面へと落とした。
御曹司の横暴は続き、被害者は出続ける。
「そうだな。
でも君は、許せなかったんだろ?」
「そう、ですね」
わかっていても、あの時間に戻り後輩から今にも泣き出しそうな、必死に縋る目で見られたらやはり、カッとなって食ってかかっている自信がある。
「君は頑張った、偉いよ」
「偉くなんかないです」
彼は褒めてくれるが、私はただ考えなしに御曹司と喧嘩をしたに過ぎない。
もしかしたら私のせいで、さらなる被害者が出たのかも。
そう思い至ると身体が冷えた。
「少なくともその後輩はきっと、君に感謝しているよ」
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