3人が本棚に入れています
本棚に追加
New beginning ‥‥扉を開けた勇気
その男、人生、そろそろ折り返し地点が近づく年齢になってきた、、、
昔から、こうと思うと一直線に、誠実に生きていた。
紆余曲折はありながら、人には恵まれていて、仕事柄、色んな職種の人達との出会いは、
彼の宝でもあった。
彼の勤務先は、都心にあった、、、
『何故、ホテルマンを選んだのか?』 と、聞いたことがあった、、、
昔、トムクルーズ主演のカクテルという映画を観た時、バーテンダーが魅力的に映ったのだと、、、
なるほど、、、そんな風に職業を決める人もいるのだと、新鮮だった。
もともと、礼儀正しい彼だが、ホテルの接客業務は、なかなか厳しい職種だっただろう、、、
数年間で、ホテルマンらしい顔つきに変わり、仕事ぶりが、外からの人間の目に止まる時期でもあったのだと思った、、、
社会人になって、数年経ち、仕事にも慣れ、ゆくゆくは、映画の、トムクルーズの様になろうとは思っていなかったかもしれないが、
彼は、バーテンダーになりたかったのだった。
それなりの役割も任されて、日々、忙しくしていた頃、
これから先に、波瀾万丈な人生がやってくると想像だにしていなかった。
真っ直ぐな性格、仕事に対しても、彼なりに自信もあったことだろう、、、
他人の良かれと思ったひと言で、人生は変わっていく、、、
同じ職種だったが、いわゆる、ヘッドハンティングだ。
その、ひと言が、きっかけではあっても、その先は、自身の決断である。
どんな道になったとしても、何が待っていたとしても、、、
目の前にやって来る出来事が、高い壁だとしても、その壁を越えられるからこそ、やってくる、、、
もっと言えば、そのシナリオは、自身で決めて、生まれて来たのだから。
人を信じ、自分を信じ、仕事に真摯に向き合って、時間は過ぎていった、、、
ある日、彼に重大なことが起こった、、、
が、しかし、それは、彼自身では、どうにも出来ないこと。
真面目に、真っ直ぐ生きてきた彼にとって、決断をしたのだ、、、
仕事を辞め、誰にも打ち明けられず、辛い日々になっていく、、、
きっと、生きるか死ぬかの選択も、頭をよぎる日々を過ごしたのだろうと思った、、、
時間だけが過ぎていき、ずっと後になって話を聞かせてもらった時、
痛いほどに、そう感じた。
世の中には、いい人も、悪の人もいて、、、だから世の中が、成り立っているとも言える。
何事においても、バランスなのだと思う。
悪の人間を、勿論、正当化するつもりもなく、が、初めから、悪の人などいないのであって、
そうなる過程があった訳だが、目先の損得に目が眩み、想像力が欠けていたのだと思う他ない。
人間関係は、難しい、、、
色んな体感を得て、思うことがある。
「人生は、鏡の法則」
自分の思いが、いいも、悪いも、引き寄せる。
奇しくも、彼は、白い鏡を魂に刻んで、生まれて来たのだ、、、
その、白い鏡に気づいたのか、そうではないのかは、わからないが、、、
彼は、あれから数十年間、自分の殻に閉じこもって、自分を追い込み、
自身を責め、外界との繋がりを殆ど絶って生きていた。
鏡に、自分を閉じ込めて、、、
他人を信用出来なくなった、、、騙されたからだ、、、人が怖くなった、、、
自分の思いが判らなくなった、、、世界が真っ暗になった、、、
自分が、1番、変わらなければいけないと、強く思えば思うほど、彷徨っていく、、、
初めの1歩が、重く、恐怖と痛みと、重圧に踠きながら、自分と、闘っていた。
季節は、目まぐるしく変化していく、、、
こんなはずではなかった、、、何故、自分は薄暗い部屋にいるのだろう、、、
ドアを開けて、出かけることは、いつでも出来る、、、
やりたいことがあるなら、また、ゼロから始めればいい、、、
グルグルと、頭の中だけで、思いを巡らせていたのだろう、、、
そして、彼は、父を亡くし、、、
暫くして、母が倒れた、、、
解っていた事だが、彼にとって、本当の意味で、目が覚めたのか‥‥‥
これまで、色んなことで、迷い、なかなか進めなかった、自身の未来を、、、
‥‥‥重たい扉を、開ける決心がついたのだった‥‥‥
扉を開ける勇気、、、
その勇気は、長い年月、彼にとって、忘れることの出来ない重いもので、
掛け替えのない時間と、深く潜っていたからこそ、気づいた大事なもので、
その時、初めて、大事な鍵を見つけたのだと思う。
自身を鏡に閉じ込めて、そこから出て来る勇気、、、
そして、新しい扉を開ける勇気は、凄い事だと感じている。
最初のコメントを投稿しよう!