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それは、よく晴れた日のこと。
青々とした空。照りつける太陽。この時期にしては気温は高く、何処か蒸しっとした暑ささえ覚える。
それでも、耳に入る民たちの声は何処か期待に満ちているようだった。
(……あぁ、あれから三ヶ月。よく、頑張ったわ)
侍女たちにアクセサリーを着けてもらいながら、リーナ・フリートハイムは息を吐いた。
(これから、私は女王よ。……頑張らなくては)
元々、リーナは自身が王位を継ぐだなんて想像もしていなかった。
だって、リーナには兄がいたのだ。七つ年上の温厚で優秀な兄が。
しかし、兄はつい三ヶ月前に亡くなった。……先代の国王夫妻である、リーナの両親と共に。
「リーナさま」
俯いていれば、幼いころから面倒を見てくれている侍女が、心配そうに声をかけてくる。
だから、リーナは笑った。その笑みがぎこちないのは、きっと彼女には見抜かれている。
「大丈夫。……私は、やれるわ」
胸元で輝くペンダントを握りしめて、リーナはそう呟いた。
これは、十八歳の誕生日。成人をした際に両親がプレゼントしてくれたものだ。
(お父さまもお母さまも、とても素晴らしいお人だった。そして、この国の平和を誰よりも願っていらっしゃった)
今となっては、二人の願いを叶えることが出来るのはリーナしかいない。
「……行くわ」
椅子から立ち上がって、リーナはドレスの裾をなびかせながら歩く。
癖一つない赤色の長い髪はきれいにまとめ、少しだけ編み込んである。髪の毛と同じ赤いドレスを身に纏って、リーナはバルコニーの前に立つ。
「……お願い」
バルコニーの前で待機する二人の騎士にそう言えば、幕が上がる。
リーナは一歩を踏み出して、バルコニーから集まった民たちを見下ろす。
彼らの目がリーナ、たった一人だけに注がれている。心臓がきゅっと縮まりそうになって、それを必死にこらえた。
息を吸って、吐いて。リーナは顔を上げて、高らかに声を上げる。
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