第1章

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「私は、今はそのときではないと思っております」  はっきりとそう言えば、大臣たちは不満そうな声を上げる。 「ですが、女王陛下。このままでは、正当な血筋の王族は途絶えてしまいます。一刻も早く、王配を迎え……」 「そうでございます。先代の国王夫妻も、あなたさまの兄上も。それを望まれていますよ」  リーナは少々引っ込み事案だ。そのうえで、少し気が弱いところがある。  王女時代はそれでもよかったし、押しに弱くてもある程度は許された。けれど、今はそうはいかない。 「……お父さまやお母さま、お兄さまは私の考えを尊重してくださいます。それに、きっとこうおっしゃいますわ。……国を安定させることを、第一に考えろと」  目を瞑ってそう告げれば、大臣たちはなにも言えないとばかりに黙り込んだ。  ……常にこういう風にしおらしくしてくれればいいものを。明日になれば、今日のことなど忘れてまた同じことを繰り返すのだろう。  あまりにも当然のように言うため、リーナはここにいる年配の大臣たちはボケているのではないかという疑いを持っているくらいなのだ。 「本日の議題は、これにて終了でございますね。私は公務がありますので、これにて失礼いたします」  ドレスの裾を翻して、リーナは会議室の出口に向かって歩く。大臣たちの忌々しいとばかりの視線には、気が付かないふりをした。 (大方、王になるための教育をろくに受けていない小娘ならば、容易く操れると思ったのでしょう)  確かに、リーナは王女として必要な教育は受けているが、女王として必要な教育は受けていない。  誰一人として、リーナが王位を継ぐとは考えなかったためだ。
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