142人が本棚に入れています
本棚に追加
いずれは貴族の家に降嫁するか、他国の王族に嫁ぐか。そのどちらかだと、誰もが予想していた。もちろん、リーナ自身も。
(でも、こういうことになってしまった以上、くよくよ言っていられないわ。私は、私にできることをせねば)
先代の国王夫妻、そしてリーナの兄である当時の王太子が亡くなって、早くも九ヶ月が経った。
季節はどんどん移り変わり、リーナの気持ちを置いてきぼりにしていく。
「私は、きちんと女王にならなければ……」
ぎゅっと手を握って、リーナは唇をかみしめた。
(この後は、辺境の土地についての報告を受けなければ)
辺境は王都とは全く環境が違う。それ故に、リーナは定期的に事務官を送り、報告を受けていた。
今日はその報告を受ける日だ。
(辺境の現状を知り、支援が必要ならばその準備をしなければ。あとは……)
王女時代とは全然違う、忙しい日々。その証拠に、ここ九ヶ月ろくに睡眠さえとれていない。
「リーナさま。……少々、お休みになったほうがよろしいかと思います」
側にいた侍女長がそう進言してくる。……けど、リーナは首を縦には振らなかった。
「いえ、もう少しで王国内の情勢ももう少し安定しそうだもの。……あとちょっと、頑張るわ」
先代の国王夫妻が亡くなったことにより、治安は一時荒れていた。このどさくさにまぎれた犯罪が横行したのだ。
それを知ったリーナは、なによりも国内の情勢を安定させ、混乱を解くことに重点を置いた。
(犯罪が横行すれば、ろくな結果につながらない。それに、そんなことで命を落とすものがいていいはずがないわ)
幼い頃、リーナは母にそう言い聞かせられていた。だから、その考えは頭の奥にしっかりと染みついている。
最初のコメントを投稿しよう!