第1章

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 いずれは貴族の家に降嫁するか、他国の王族に嫁ぐか。そのどちらかだと、誰もが予想していた。もちろん、リーナ自身も。 (でも、こういうことになってしまった以上、くよくよ言っていられないわ。私は、私にできることをせねば)  先代の国王夫妻、そしてリーナの兄である当時の王太子が亡くなって、早くも九ヶ月が経った。  季節はどんどん移り変わり、リーナの気持ちを置いてきぼりにしていく。 「私は、きちんと女王にならなければ……」  ぎゅっと手を握って、リーナは唇をかみしめた。 (この後は、辺境の土地についての報告を受けなければ)  辺境は王都とは全く環境が違う。それ故に、リーナは定期的に事務官を送り、報告を受けていた。  今日はその報告を受ける日だ。 (辺境の現状を知り、支援が必要ならばその準備をしなければ。あとは……)  王女時代とは全然違う、忙しい日々。その証拠に、ここ九ヶ月ろくに睡眠さえとれていない。 「リーナさま。……少々、お休みになったほうがよろしいかと思います」  側にいた侍女長がそう進言してくる。……けど、リーナは首を縦には振らなかった。 「いえ、もう少しで王国内の情勢ももう少し安定しそうだもの。……あとちょっと、頑張るわ」  先代の国王夫妻が亡くなったことにより、治安は一時荒れていた。このどさくさにまぎれた犯罪が横行したのだ。  それを知ったリーナは、なによりも国内の情勢を安定させ、混乱を解くことに重点を置いた。 (犯罪が横行すれば、ろくな結果につながらない。それに、そんなことで命を落とすものがいていいはずがないわ)  幼い頃、リーナは母にそう言い聞かせられていた。だから、その考えは頭の奥にしっかりと染みついている。
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