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「ですが、このままではリーナさまのお身体が……!」
しかし、侍女長もそろそろ引くに引けないところに足を突っ込んでいるのだろう。
心配を含んだ、少し強い口調で注意をしてくる。
「リーナさま。あなたさまは、今、この国で最も尊い存在でございます。そんな、無茶ばかりされていては……」
「……尊い存在だからこそ、よ」
侍女長の言葉に、リーナは口を挟んだ。
「尊い存在だから、私はその分報いなければならない。民たちが信じてくれる分、頑張らなくてはならない」
結局、リーナは真面目なのだ。そのためならば、自分が犠牲になったとしても構わないと思っている。
(もちろん、私がいなくなれば現在の王家は血が途絶えるわ。けど、その場合は――)
自然と頭の中に浮かんだ人物。リーナの口元が、緩んだ。
(次に会うときは、彼に相応しい人物にならなくちゃ。……きちんと、立派に女王を務めている。その姿を、見せなければ)
そのために、もうひと踏ん張りだ――と、思っていたとき。
不意にリーナの身体が傾く。
「リーナさま!」
身体に力が入らない。その所為で、体勢を立て直すことも上手く出来ない。
(頭だけは、守らなくては――)
その一心で、リーナは受け身を取ろうとした。が、それよりも早く。誰かに、身体を抱き留められた。
それから、流れ作業のように軽々と抱き上げられて、リーナはぽかんとする。目を瞬かせれば、リーナを受け留めた人物は「危ないな」と零した。
……この声を、リーナはとてもよく知っている。
(まだ戻ってこられるときでは……)
頭が混乱する。でも、自分の直感を信じよう。
そう思って、リーナはその人物の顔を見つめた。……恐ろしいほどに整った美しい男が、そこにいる。
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