第1話 ステータス。

1/1
前へ
/8ページ
次へ

第1話 ステータス。

 僕が最初に思ったのは「暗いな」だった。  それに「冷たい」。  それと「濡れてる」。  暗い。  とにかく暗い。  だけど、目が慣れてくると、なんとなーく周りが見えるようになった。  いや。  目で見てるのじゃなさそうだ。  肌で感じている。  前に見たテレビで生物には「氣」が宿ってると、氣功師が話していた覚えがあるが、ソレかもしれない。  でも、生物でない石や土の粒の輪郭まで光っているのはどうしてだろう?  そういえば、石や土の粒の表面には目に見えなくとも細菌とか微生物が生息しているんだったか。  そいつらの「キ」が薄明かりとなって見えているのか。  そこでようやく、周りは「土」なことに気づいた。  ということは「地面の中」なのか。  ここは。  そういえば、周りの温度を初めはただ冷たいと感じたが、慣れたら仄かに地面の中の温かさを感じるようになってきた。  そして、ここより更に下の方、地中の方がより温かい雰囲気を感じる。  だから下に行きたい。  それに、周りが濡れてるのも悪くない。  僕は喉が渇いている。  いや、全身が水分を欲していた。  地中の奥深くの方に、大きな川の流れがある予感がある。  そこにたどり着いて、ゴクゴクと冷たい水をたんまり飲みたい。  そこで、ふと思った。 「一体僕は何者なんだ」って。  不思議だ。  おかしい。  僕は普通の人間の男だったはず。  名前が思い出せない。  名前どころじゃない。  全部思い出せない。  これは、あれか。  異世界転生でもしたのか?  僕は異世界の地底の国の住人として生まれ変わったのかもしれない。  そして、前世の記憶は魂を洗濯(リセット)されて漂白(クリア)されちまったのか。  だが、名前は思い出せなくても、コレは覚えてる。  前世読んでいた無料のネット小説のお約束を僕は思いだした。  この言葉を。 「ステータス」  僕って、どうでもいいことだけ覚えてるよな……  ところが、驚いた。  実のところこの言葉を発したところで、結果は全く期待していなかった。  だが、驚きの結果が待っていた。  ////////// ////////// //////////  種族名 ***の根っ子  レベル 1  個体名 根男(ねお)  スキル 穴掘り、水飲み  ////////// ////////// //////////  目の前に、電子的でゲーム的なウィンドウが現れたのだ。  そうかそうか。  生まれ変わって、植物の根っ子になったのか。  って、なんでやねーん!
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加