第一章 天使、下界へ

1/1
前へ
/37ページ
次へ

第一章 天使、下界へ

第一話 天使、下界へ 「天使リア、よろしいですか?」 「……はい」  随分と前に、私の尊敬する御師匠様がいなくなりまして。その責任を問われて尋問席と呼ばれる一席に、私は座らされておりました。 「あなたの上位天使である天使ルべウスは堕天いたしました。その責任は、彼の下位天使であるあなたが取らなければなりません」 「…………」  尋問席の周りには中級天使の方々が立ち、私を見下ろしています。口には出しませんがとても怖いです。 「そこで、あなたにはとある任務についていただきます」 「にんむ、ですか」 「ええ。下界に行き、魔族や悪魔のもとで彼らの策略を学んで来ていただきたいのです」 「え?」  開幕一番に頭に浮かんだのは、今いる家を出られる喜び。次に浮かんだのは絶望だ。だって天使であることがバレてしまえば、即刻殺されてしまうのですから。  最近は天使が殺される事件があとを絶ちませんし。 「我々天使が悪に打ち勝つためには、その裏をかかなければなりません」  そのために悪魔の策略を学び、彼らの思考を読む必要があると。ふむふむ。そこまではわかりました。 「そこで、あなたには悪魔たちの通う学校へ潜入していただきます」 「……なぜです? 神がそう告げたのですか?」 「学校の教師陣は心無い魔族です。正体を決して明かしてはなりませんよ」 「無視ですか?」  ちょっと理解に苦しみます。こんな命をかけた任務につかされるなんて、ルウベス様が何をしたっていうんだ。私は怒っていますよ、口には出しませんがね。  あと……だてんってなんですか?
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加