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第四章 妙な噂
第十一話 噂
「噂?」
「そうそう、二人は知らない?」
ある日の放課後。キラアの口からこの学校の学生に関する噂の存在を聞く。その話は初耳で、私とユーデは身を乗り出した。
「この学校内に天使が紛れ込んでるってさ」
「そうなんだ」
「へ、へぇ〜……そっか〜。興味な〜い」
「リア? こっちガン見してどうしたの、目怖いけど」
あからさまに目を逸らすのも怪しいかと思い、キラアを見つめすぎて逆に怪しまれてしまった。痛恨のミス!
「キラアの頭に虫止まってて、仕留めようかと……思ったけどもう逃げられた」
「なるほど、狩の視線だったのね」
適当に相槌を打ちながらも私の心は乱れていた。天使が紛れ込んでいる? 私の存在がバレそうってこと? こんなに上手くやっているのに?
「ああ」
違うな、私は上手くみんなを騙している。だからきっと他にも潜入している天使がいるんだ。その人がバレちゃってるのね。だったら、早く助けなければ。
「キラア、噂について詳しく教えて!」
「えっ、興味ないんじゃないの?」
ああ、そんなことも言ったっけと思い、もっと彼の方に身を乗り出した。
「潜入している天使を急に見つけたくなったの!」
「急にね、了解。そういうこともあるよね」
そう言いながらキラアは噂について知りうる限りを教えてくれた。オープンマインドな彼は校内では結構な人気者で、この手の情報が入ってきやすいらしい。図らずともいい友を持ったと思う。実際にいい奴だし。
「夜中の学校内をね、白い羽を落としながら歩いてるんだって」
「白い羽を?」
「そう、点々と続いてて、用務員さんに朝掃除されてるらしいよ」
じゃあ夜の学校に行けば何かわかるかも、と私は言い、早速今夜決行しようと意気込んだ。善は急げ。今日や明日には誰かに襲われてしまうかもしれないのだから。
「ねぇねぇ、面白そうだからさぁ、今夜オレも一緒いっていい?」
「ユーデも?」
「うん」
これまで静かにしていたユーデが話に乗ってきた。正直一人で行った方が都合がいいが、ここで断るのもなんだか妙な気がする。……仕方ない。
「もちろん、集合場所考えとく」
今夜私はユーデと共に学校を探索する。噂を持ってきてくれたキラアは、意外にも夜は出歩きたくない性格らしく、来ないらしい。いたずらっ子で夜は部屋を抜け出す筆頭のような佇まいだが、人は見かけによらないとよく言ったものだ。
そして夜。暗がりの中、私とユーデの姿だけが月明かりに照らされている。学校の施錠はとても甘く、どうぞ侵入してくださいと言っているようなものだった。これでいいのか、悪魔の学校なら狙われやすいだろうに。
「リア」
声を潜めてユーデが呼びかけてくる。二人ともなんとなくひそひそ声で会話していた。ユーデが指差す先には、白い羽が一枚落ちている。
「羽だ! 白い……!」
羽の落ちている先を見るとそれは続けて点々と落ちていた。噂通りだ。ではこの先に天使がいるのだろうか。ドキドキと私の心臓は高鳴っていた。
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