第五章 危険なスポーツ

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第十八話 急上昇、急降下  ビョーン!  キラアに話は聞いてはいたが、私が飛び込んだ瞬間、トランポリンは聞いた通りの音を立てた。 「わわっ」  私の体は高く跳ね上がり、塔の横をぐんぐん上昇していく。ある程度の高度に達したら塔にしがみついて、あとは上に登らなければならない。改めて思うがなんなんだこの競技。 「っ」  アンカーを務めると決まってから今日までの間、私は血の滲むような努力をしてきた。だって塔にしがみついて登るのだから。並大抵のことではない。 「!」  すぐ後ろに気配を感じた。手足を動かしながらそっと斜め下に視線を送る。 「おいついた」 「あ」  そこには私と同じように塔にしがみついたピャーナ先輩がいた。まずい、かなり距離は離れていたはずなのに。そう焦るうちに、彼は私の隣に並んだ。 「ま、負けませんよ!」 「頑張って」  私たちは塔のてっぺんに手が届く高さに到達した。二人で手を伸ばす。 「んっ……!」 「ぐっ!」  先輩の方が手が長くて、リーチで負けている。でも……! 「っ」 「よし取った……」  先輩にあっけなくボールを取られる。やられた、負けてーー。  ぐらっ  体のバランスが、大きく崩れるのを感じた。ああ、まずい。落ちる。 「しまったーー……リア!」  こうして、急降下する私に手を伸ばし、ニヒルに笑うピャーナ先輩の図が出来上がったというわけである。先輩が何故笑っているのかは知らないが、今は思考のたどり着いたままに動くしかない。……もしもがあったら化けて出てやる。 「キラア! ユーデ!! ペタァァアア!!!」  友人の名前を叫んだ。これがルウベス様から授けられた知恵だ。間違いはない。  ボフッ!!!  落下した時、私の体は背中から、巨大なクッションに受け止められていた。 「!」 「リア、大丈夫!?」 「怪我は?」 「大丈夫そう。……ありがとう、助かった」  クッションの上に名前を呼んだ友人達が登ってくる。ああ、本当に救われたのだと安心した。目を凝らすと、塔の方にまだピャーナ先輩がいるように見える。  もしかしたら先輩にはクッションが見えて、私が助かるとわかったので笑っていたのかもしれない。 「よかったー。たまたま大きいクッションがあってよかったね」 「ほら、捕まって」  ペタに手を引かれて私は起き上がった。 「このクッション、どうしたの?」 「それはね」  三人は少し前の出来事を話してくれた。  ユーデは私にリボンを渡して塔の下でそのまま私を見ていたらしい。しかし、ちょうどてっぺんあたりで私の体が傾くのが目に入った。 「リア!!」  私が落ちると焦った三人が当たりを見渡すと、先ほどまではなかったはずの場所に、巨大なクッションが置かれていたという。 「こ、こんなところに大きいクッションが……!」 「ちょうど良すぎる〜……!」 「いいから運ぼ! 間に合わない!」  それから近くにいる生徒達の協力も仰いで、クッションを落下地点に置いてくれたらしい。  何故クッションがあったのかは知らないが、まあいい。命が助かったのだから。やはりルウベス様の教えは正しかったのだ。そう安堵していると、荒い靴音が聞こえる。それは徐々に大きくなっていった。 「リア!」 「せ、先生……?」  息を切らしたラッグ先生は大変ご立腹のようで、私の後ろの壁に上からどんっと手をついた。
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