第二章 抜き打ち羽広げテスト

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第二章 抜き打ち羽広げテスト

第二話 抜き打ちテストは予習済み 「よし。全員揃ったな。黒板の前に一列に並べ」  悪魔の学校の入学式の日。教室に入るや否や、怖そうな先生がそう言った。私を含めたクラス全員は緊張の面持ちで黒板の前に並び、担任だというラッグ先生は納得したように頷く。 「これから順番に羽を広げてもらう。悪魔の大半ができる技だ。出来ないものは出来るようになるまで鍛錬し披露するように。早速一番から」  抜き打ち羽広げテストだ。驚くことはない。もちろん知っておりましたとも。  この学校の名物と呼ばれるほど有名ですからね。ええ。  私はうんうんと首を縦に振りながら羽を広げる悪魔達を見る。呼ばれた生徒の背中から黒い羽が一瞬大きく開き、液体が飛び散るような速度で消えていった。大丈夫、本物は初めて見るが想定通りだ。 「次」  この学校に入学が決まった日には既に、悪魔の羽については天界の書庫で学んでいた。天使は白い羽しか広げることができないから、この試練を突破する対策が必要。もしここで白い羽でも広げてみたらどうだろう? 『なぬっ!? 白い羽だと……貴様天使だな!』 『殺せぇぇえええ!!!』  ……となる。想像はいとも容易い。なのでもちろん対策済みだ。悪魔の羽は真っ黒で、先ほど見た通り一瞬で液体のように散る。それを知った私は考えに考えを重ねて準備をしてきたのだ。  加えて髪色も白から黒に変えてある。こうすれば悪魔に紛れ込めるからだ。  背中からたぷん、と水音が聞こえる。そう。私の背中にはブラックコーヒーの入ったビニール袋が仕込まれている。両肩から伸びる二本の紐を勢いよく引っ張れば、それが背中から飛び散る仕掛けだ。しかもこのビニール袋、特殊な魔法がかかけられており、飛び散った液体が一瞬で戻ってくる。多少味は落ちるが、コーヒーはその後美味しくいただける超優れものだ。  さあ、抜き打ちテストなどさっさと終わらせて、砂糖とミルクたっぷりのコーヒーで勝利の乾杯といこうじゃないか。 「次!」  一人、また一人と背中から黒い羽を広げていく。刻々と順番は近づいてきている。私は最終確認として、両手に握られた紐をくんっと軽く引っ張った。  ぷちっ。 「……?」  ぷちっ……? なんだろう今の音は。そう思い手元を見てみると、右の肩口から覗く紐が千切れていた。なんということだろうか。  これでは仕掛けがうまく作動せず、コーヒーを撒き散らすことができない。左側は……大丈夫。生きている。ならば左半身を先生に向けて披露するしかない。少し悲しくなってきた。  なんだか前にもこのようなことがあった気がする。なんだったかな……? 焦りの中で私は、その出来事の記憶を引っ張り出していた。しかしそんなことをしている間にーー。 「次、リア カロウリ」  ああ、もう呼ばれてしまった。
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