第六章 憧れの仮装パーティ

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第二十二話 取るべき行動は? 「くらぇ〜。異国の呪いの刃物じゃ〜あ」  間抜けな声が聞こえた後、ぎゅるぎゅると鋭くて奇妙な音が耳に届く。頭上を見上げると、弧を描いた刃物のようなものがぐるんぐるんと回っている。一瞬何が起きているのかわからなかったが、すぐに危険が迫っていることを自覚した。 「ひっ!」 「どうしたリア……うわ! 何あれ!」  キラアの声にみんなが天井を見上げる。意思を持ったように刃物は回り続けて、天井付近で暴れていた。刃物は邪悪なオーラを纏っている。見たことがない代物だ。 「い、異国の呪いの刃物が暴走しちゃったぁ〜あ」 「えええええっ!!!!」  砂漠の大富豪の仮装をしたという二年の先輩が、これまた気の抜けた声を出しながらそう告白した。なんてやつだ。本格的に仮装したい気持ちはわかるが、流石に武器はおもちゃを持ち込んで欲しかった。  何故本物を持参してしまったのか。あとで尋問席に座らせて小一時間問い詰めたい。 「きゃああああ!!!」  刃物は照明や壁の絵画を傷つけて回り続けている。流石呪いの刃物といったところか。これだけ色々なものにぶつかっても威力は衰えていない。鉄も壁も、ザクっと断ち切られている。  ガシャンッ!!!  そして一際大きな音を立てて、暴れる刃物はシャンデリアの鎖を断ち切った。……たった一太刀で。 「危ない!!」  ペタの叫び声が聞こえた時には、もう直近までシャンデリアが迫ってきていた。真下にいる私とキラアは確実に下敷きになる。  私の腕を持ってすれば、回避できないことはない。しかしそれは天使の力を使えばの話だ。もしここで惜しみなく天使の力を使ったらどうだろう? 『なぬっ!? 何だその力……貴様天使だな!』 『殺せぇぇえええ!!!』  ……となる。想像はいとも容易い。しかしもう、どうこう言ってられない。私は手のひらに力を集中させる。 「っ!」  パリン、と音を立ててシャンデリアは跳ね返った。天使の力を手元に集中させて押し返したのだ。ガシャン、と大きな音を鳴らしてシャンデリアは落ち、ガラスが弾け飛ぶ。私の足先の近くまで欠片が飛んで来ていた。 「大丈夫? キラア」 「う、うん……リアは」 「平気だよ」  周りを見たところ怪我人はいない。当然だ。ある程度の広さがある位置を狙って、シャンデリアを落としたのだから。 「ああ……」  誰も傷つかなかった。それはいいことだ。でも私の心は絶望に満ちたまま。  背後から、白い羽が一枚飛んでくる。  力の制御を誤り、白い羽を出してしまった。今私の背中から、大きな天使の羽が生えている。会場は凍りついたように静かになっていた。  ああ、もう終わりだ。バレてしまった。
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