第二章 抜き打ち羽広げテスト

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第四話 私の黒い羽  羽を広げるテスト。ついに私の名前が呼ばれる。 「はい」  用意した仕掛けは左しか使えないが仕方ない。私は椅子の貫(ぬき)に足をかけて高く飛び上がった。開かれたカーテンの間から注ぐ日光がそれまたいい仕事をしているに違いない。  一気に左肩から伸びる紐を引っ張った瞬間、背中から少しの風とバサリと羽を広げるような音が届いた。 「(完璧だ……!)」 「おお……!」  生徒達から感嘆の声が漏れている。拍手をするものすらいた。そうだろうそうだろう。さぞ素晴らしかったことだろう。そう思っているとあたりが暗くなるのを感じる。足元を何か黒い影が這っていったのが見えた気がしたが、思い過ごしだろう。  幻覚を見るほどとは……思いの外緊張していたようだ。 「次……おい、誰だカーテンを閉めたのは。開けろ」  カーテンが開かれて羽広げの確認は続いていく。ああ、うまく乗り切った。心はとても充実している。新しい学園生活の良すぎるスタートとなった。  その後寮に帰り、そっと背中からコーヒーを抽出する。袋はきっちり塞がれていて、真っ黒の液体が袋の中で揺れていた。こぼさないようにカップに注ぐと鼻孔をくすぐるいい匂いが届く。 「いただきます」  砂糖とミルクをたっぷりと注ぎ、空中で乾杯の動きをしてからコーヒーを口に流し込んだ。 「おいしい」  仕掛けが作動した後なので、味が落ちるのは覚悟していた……が、それは一切感じられず、勝利のコーヒーはとてつもなく美味しかった。  冗談抜きで異常に美味しい。思わず顔が綻ぶ。今日はいいことばかりだ。この喜びを糧に明日からまた頑張っていこう。今夜は気分が上がって眠れそうにない。 「おいこらぁ。待てや」  昨日意気込んだのも束の間。翌日の朝、早速校内で先輩達に絡まれてしまった。何故だ。 「なんだぁ、その髪色はぁ?」  そう言われてやっと気がつく。しまった、今朝は黒髪に変えるのを忘れていた。今の私は天使の時の髪色で、頭のてっぺんだけうっすら紫、そして全体は白髪だ。これはまずいことになった。 「生意気な色だなぁ? あぁ!?」 「ほら、調子乗んなよ?」  先輩が生意気な色と言い、私を天使と断定していないのは、悪魔にも白髪はいなくはないからだ。  しかし悪魔は基本、地毛は黒のはずで、力を持った悪魔たちが染めて白髪にする。所謂お洒落であり、入学二日目の一年生がするファッションじゃない。調べはついている。 「いっ!!」  一人に頭を鷲掴みにされる。そしてもう一人が紙コップを私の頭に近づけた。コップには謎の液体が入れられている。  本当にまずい。二日目からもう正体がバレてしまうかもしれない。  あと頭から変なものをかけられるのは嫌だ。しかし頭を押さえつけられていてはどうしようもない。 「ほーら、じっとしろ」  私は恐怖に怯えたままぎゅっと固く目を瞑った。
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