3人が本棚に入れています
本棚に追加
いみじくも、梅雨!
佐藤ナハコのブラウスは湿度を含み、灰色のスポーツブラを薄ら透けさせていた!
あいや待たれい!わざとではない!
彼女は平常そういった事の起こらぬ様、中にもう一枚、重ねたベージュの厚手Tシャツ!
『ねー、おかーさんベージュのないよぉ?』
ご近所でもしっかり者と評判の彼女だが!
『アンタが脱ぎ散らしたまんまにしてるからでしょ!』
家ではちょっぴりダラシない!
『白いの着てきな!』
『えー…』
白だとそれでも透ける気がして、恥ずかしい!
『じゃあ黒いの着てきな!』
『えー変だよぉ…』
夏服には、ちょっぴりこだわる!
『セーター着てりゃ分かんないわよ!』
『あついよぉ…』
『何でもいいからとっとと出な!遅刻するよ!』
そうして被ったセーターを、湿度と気温が脱がせる!そしてその事実を、鈴木タシカへの気持ちでのぼせあがった脳髄が忘却した!
一体どうしてこんなうっとおしい格好をしていたのか!さっぱり失念!痛恨の!しかし放課後までは確かに覚えていたのだ!
帰宅途中!強くなった雨足が、彼女を神社の軒下に招く!
濡れたセーターを手提げにしまった佐藤ナハコ!もう家まで2キロという距離が!彼女をうっかりさせた!
そうして、ハンカチで顔を仰いでいた佐藤ナハコの下に最も招かれざる客!現る!
『うはー!天気もちそうだったのにー!』
駆け込んできたのは鈴木タシカ!鈴木タシカ!
『あれ?ナーコじゃん』
幼稚園の頃からの長い長い初恋相手!鈴木タシカ!
『………っぅ…』
頬を赤らめ、手を上げる事しか出来ない佐藤ナハコ!思春期が彼女から言葉を奪う!
一方の鈴木タシカ!前々からデカいなと思っていた彼女の胸部!浮き出た灰色を目聡く見つけ!数瞬凝視!しかしやはりこちらも目を逸らす!思春期!
「…………………」
そうして賽銭箱をはさんで立ち!前を向いたままおし黙った二人!奇しくも狛犬と同じ立ち位置である!
そしてその方角が!その向きこそが!
ほんのつまらない!蝶の羽ばたきであったのだ!
最初のコメントを投稿しよう!