青春回路うるせぇ。

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 いみじくも、梅雨!  佐藤ナハコのブラウスは湿度を含み、灰色のスポーツブラを薄ら透けさせていた!  あいや待たれい!わざとではない!  彼女は平常そういった事の起こらぬ様、中にもう一枚、重ねたベージュの厚手Tシャツ! 『ねー、おかーさんベージュのないよぉ?』  ご近所でもしっかり者と評判の彼女だが! 『アンタが脱ぎ散らしたまんまにしてるからでしょ!』  家ではちょっぴりダラシない! 『白いの着てきな!』 『えー…』  白だとそれでも透ける気がして、恥ずかしい! 『じゃあ黒いの着てきな!』 『えー変だよぉ…』  夏服には、ちょっぴりこだわる! 『セーター着てりゃ分かんないわよ!』 『あついよぉ…』 『何でもいいからとっとと出な!遅刻するよ!』  そうして被ったセーターを、湿度と気温が脱がせる!そしてその事実を、鈴木タシカへの気持ちでのぼせあがった脳髄が忘却した!  一体どうしてこんなうっとおしい格好をしていたのか!さっぱり失念!痛恨の!しかし放課後までは確かに覚えていたのだ!  帰宅途中!強くなった雨足が、彼女を神社の軒下に招く!  濡れたセーターを手提げにしまった佐藤ナハコ!もう家まで2キロという距離が!彼女をうっかりさせた!  そうして、ハンカチで顔を仰いでいた佐藤ナハコの下に最も招かれざる客!現る! 『うはー!天気もちそうだったのにー!』  駆け込んできたのは鈴木タシカ!鈴木タシカ! 『あれ?ナーコじゃん』  幼稚園の頃からの長い長い初恋相手!鈴木タシカ! 『………っぅ…』  頬を赤らめ、手を上げる事しか出来ない佐藤ナハコ!思春期が彼女から言葉を奪う!  一方の鈴木タシカ!前々からデカいなと思っていた彼女の胸部!浮き出た灰色を目聡く見つけ!数瞬凝視!しかしやはりこちらも目を逸らす!思春期! 「…………………」  そうして賽銭箱をはさんで立ち!前を向いたままおし黙った二人!奇しくも狛犬と同じ立ち位置である!  そしてその方角が!その向きこそが!  ほんのつまらない!蝶の羽ばたきであったのだ!
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