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ここに一人の男がいる!
名は山田ジンツテ、神主である!
正義に満ちる男だ!熱い血潮の男だ!
妻と子二人、愛し愛される生真面目な男だ!
彼は管理室にて、書類の整理をしていた!
目の前にはモニター!防犯カメラに写し出された映像だ!4k!圧倒的な画質!遅滞なき流麗なコマ送り!
彼は煩雑な仕事の僅かな暇に、変化の少ない映写にちらりと目を向ける!何故か!
少し以前より界隈を賑わす賽銭泥棒!その名も怪盗カブトムシ!汎ゆる甲虫に紐を括り賽銭を手繰るその鮮やかな手口!犯行を終えた賽銭箱に盗った金額と使用した甲虫の種類を記した領収書を残していくのが奴の流儀!
噂の奴めを捕らえんと、ほんの3日前に設置したものであった!
当然記録されているので監視する必要はない!ないが!人の少ない時間はハッスルタイム!彼は現行犯で捕えたかった!
というかちょっと見たかった!
本日は雨天なり!ハッスルどころかカーニバル!
そういった訳で山田ジンツテ!雑事をモニターの前で熟す!
既に四時間が経過していた!
「まぁ来ないわな…」
疲弊もある!モニターを観ながらだと書類仕事も効率が悪い!山田ジンツテは一極集中の人であった!
諦めて書斎に行こうとかという!正にその時!
「うん?」
賽銭箱の横に駆け込んできた!おさげメガネの制服女子!少し離れたところにある高校のものだった!
まあ単なる雨宿りであろうとは思ったものの!一応彼女をズームしておく!
書類仕事に目を戻す山田ジンツテ!そのまま監視するつもりであったが、ちょうどややこしい文面に差し掛かる!
「えっとぉ?日付は…」
頭をワシワシと搔く!これは集中するためのルーティン!
キタ!ワシワシキタコレ!と妻子に頻り揶われたソレである。
暫しの間、黙々と作業を続ける山田ジンツテ!
彼の集中を破ったのは妻!AI☆S☆AI!
「ジンさん、お茶しまっ…」
山田ナカ!お茶と茶菓子を乗せたお盆を落とした愛妻が、山田ジンツテの集中を切らした!
嫁姑もそつなく熟す妻である!器用で気立ての善い妻である!
その妻が!お盆をひっくり返した!
「ジンさん…」
「びっくりした。どうしたんだい?ナっちゃん」
驚き振り向く山田ジンツテ!愛妻の震える指が示す先を確認する!
「……あ?」
果たして!モニター画面に映し出されていたのは!
「非道い!ジンさんたら大きなお胸が好きなのね!?」
ブラウスから覗く!たわわに実った鈍色の一筋!
「ちっちが!なっ!ちょっ!違うんだ!」
男と女!夫と妻!長年連添って初の夫婦喧嘩である!オシドリ!
怒り!焦り!嫉妬!羞恥!
夫婦から放たれたその熱は換気扇から外部に漏れいでて!
外気温を僅かカンマ以下5桁ケルビン!押し上げる!
折しも6月中旬!
その熱が!上気したその四つの頬が!今年に入って初の摂氏30度越えを記録させた!
偶々、最後の一圧しを、呵らしめた!
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