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大学生の頃、周りの友達がやっているような、カフェとか居酒屋じゃなくて、近所のコンビニでアルバイトをしていた。
高校生から主婦の人まで、いろんな年の人がいて、逆に付き合いやすかったからだった。
そこでよくシフトが一緒になったのが、大学は違ったけれど同じ3年生の松谷くんだった。学年は一緒でもわたしの方が2つ年上になるのだけれど、彼はそんなこと気にもしないで普通に接してくれた。
ある時、松谷くんが自分の彼女と、先輩と飲みに行くので一緒に行こうと誘ってくれた。
そこで紹介されたのが入江さんで、その時彼は3歳上の26歳。
箔泉堂で働いていると教えてくれた。
連絡先を交換し、何度か遊びに行くうちに、付き合うことになった。
わたしは学生で、彼は社会人だったからなかなか時間が合わなかったりしたけれど、うまくいってるつもりだった。
その頃、母親が再婚して同じ年の義妹が出来た。
すぐに仲良くなって、愛理という名のその子とは、義妹というよりは友達みたいによく一緒に買い物に行ったりした。
同じ年だったけれど、既に社会人1年生だった愛理は、会社の人間関係で悩むことが多かったので、入江さんに相談した。
入江さんは愛理の話し相手になってくれて、わたしにはわからない仕事の悩みを親身になって聞いてくれていた。
だんだん愛理が明るくなっていくのがわかって嬉しかった。
「仕事が忙しい」と言う彼の言葉を信じ、「会社の人とご飯を食べてきた」という愛理の言葉を信じていた。
だんだん、以前みたいに愛理と話すことが減っていっても、あんなに上手くいかなくて悩んでいた会社の人と、ご飯を食べに行くほど仲良くなれて良かった、と喜んでいた。
大学4年生の時だった。
彼の誕生日に「お祝いしたい」と言ったら、どうしても断れない飲み会があると言われ、次の日に会うことになった。
一緒にご飯を食べて、そのまま彼の家に行った。
久しぶりに会った彼は、酔っていたせいか、ひどく強引だった。
抵抗したら両手を頭の上で強く掴まれて、思わずベッドの端を掴んだ時、指先が何かとがったものに触れた。
無意識にそれを握りしめた。
彼はひとり満足してシャワーを浴びにバスルームに行ってしまったので、手の中に握りしめていたものが何なのか確かめた。
ピアスだった。
わたしが作ったピアス。
愛理にあげた、世界にたったひとつしかないもの。
わたしは、昨日、それをつけて会社に行く彼女を「いってらっしゃい」と笑顔で見送った。
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