誰もいないはずの教室

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3ーAの教室の前まで行って、入ることを躊躇した。 中に、誰かがいる? 自分と同じように忘れ物をした誰かかとも思ったけれど、その音、というよりくぐもった声は…… 教室のドアを、少しだけ開けて、中を覗き見た。 ぼんやりとした月明かりの中、こちらを向いて立っていたのは、同じクラスの箱崎くんだった。 そして、いくつかの机を合わせたその上に組み敷かれている女の人……英語の榊先生? 箱崎くんは、ただ立っているわけではなかった。 彼はシャツのボタンを全てはずしていて、そこから肌が見える。 榊先生も、上半身を露わにし、片方の太ももを彼の手でしっかりと上に向けて持ち上げられている。 見てはいけないものを見てしまった。 そう思って、立ち去ろうとした時、箱崎くんと目が合ってしまった。 箱崎くんは、表情を変えもせず、先生の腰を支えていた方の手を離し、人差し指を自分の口元に持っていった。 榊先生の耳を塞ぎたくなるような声が漏れる教室の中、箱崎くんだけが静かに、 「内緒」 無言でそう告げた。
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