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IKEDAの8F展示場まで、満員のエレベーターで、鴨白さんとピッタリとくっついていることに緊張した。
でも鴨白さんは気にしていないようで、エレベーターの階数表示をじっと見ていた。
エレベーターを降りると、今度は会場の人の多さに驚いた。
「小鳥遊さん見つけるの大変そうですね」
「あの人、目立つからすぐ見つかるよ」
目立つ?
事務所で見た時は、地味な感じに見えたけど……
「ああ、ほら、いた」
視線の方向を見たけれど、よくわからなかった。
それで、鴨白さんについて行った。
「小鳥遊さん、大好評みたいですね」
「鴨白さん! 今回、ポスターの評判が良くて、いつもはお店にそういった宣伝媒体置くの嫌がるショップさんも置いてくださったんです。その節は、本当にありがとうございました」
そう言って会釈した小鳥遊さんは、以前会った時とは打って変わって、髪の毛はアップにしていて、白いノースリーのワンピに麻のジャケットを肩にかけ、黒のミュールを履いていた。
胸元には2連のネックレス。
ピンクのネイルは爪の先にラメが光っている。
メイクも完璧で、オリーブ色のマスカラが似合っている。
「一番右奥のショップにぜひ寄ってください。先方のお願いで端っこのブースなんですけど、ここだけの話、一番お勧めです」
「ありがとうございます。寄らせていただきます。御堂さんにもよろしくお伝えください」
「え? はい」
小鳥遊さんが少し恥ずかしそうに微笑んだ。
「じゃあ、お薦めいただいたショップに行ってみます。失礼します」
「どうぞ楽しんでください」
「挨拶」って、これだけ?
小鳥遊さんが見えなくなってから、鴨白さんが言った。
「あの人、いつもあんな感じだよ。事務所に来る時は地味だけど」
「鴨白さんが好きなのわかる気がします」
「人として、仕事に向かう姿勢を尊敬してる。そういう意味では『好き』になるか」
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