「挨拶」

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小鳥遊さんがお薦めしてくれたショップはフランス菓子のお店だった。 見た目も可愛い、美味しそうな焼き菓子がショーケースに並んでいる。 どれを買おうか迷っていると、鴨白さんが言った。 「フィナンシェ」 「鴨白さん、甘いもの好きじゃないですよね?」 「フィナンシェだけは食べられる」 なぜか、フィナンシェをあげた時の、箱崎くんのちょっと困った顔を思い出した。 もしかして、箱崎くんも甘いものが苦手だったのかな。 今更こんなことわかっても仕方がないんだけど…… 「マドレーヌも苦手で、フィナンシェも無理だと思ってたんだけど、もらったのを食べたら美味しかったから」 「じゃあ、フィナンシェとーー」 あれ? これだと鴨白さんと一緒に食べようとしてるみたい…… その後も、いくつかショップを回って、ケーキを買った。 いいって言ったのに、全部鴨白さんが支払いをしてくれて、荷物も持ってくれている。 「ケーキ買ったから早く帰らないといけませんね」 「だったら夜はデリバリーでもとる?」 「いいですね」 あれ? 鴨白さんのマンションに行く流れになってる。 「あっ」 髪の毛を引っ張られる感じがあって、そっちを見ると、年配の女性が肩にかけたバッグの鎖の持ち手にバレッタが引っかかっていた。 「やだっ! ごめんなさい!」 女性がバッグを肩から下ろすと同時にひっかかったバレッタが鎖部分にぶら下がっていた。 「大丈夫? ごめんなさい。せっかくのデートなのに、髪の毛ぐちゃぐちゃになっちゃって……」 「いえ、大丈夫です。気になさらないでください」 女性からバレッタを受け取り、鴨白さんに直してくると言ってパウダールームに向かった。
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