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朝からバタバタしていた。 かかってきた電話に対応していると、入口のカウンターに設置されたベルが鳴った。 優木さんが出て、お客さんを応接スペースに案内すると、鴨白さんのところにやってきた。 「箔泉堂の入江さんという方が来られてます」 「約束はなかったはずだけど?」 不思議そうに鴨白さんが向かうのを見ながら、しばらくして、ようやく電話を終えることができた。 メモを久山さんのデスクにテープでとめてから、優木さんがコーヒーの準備をしているところに行くと、まるで救世主でも見るような目で訴えられた。 「電話終わった? 頼んでいい? 3時までにあげないといけない仕事があるから焦ってるんだ」 時計を見るとあと15分くらいで3時だった。 「ごめんなさい。代わります」 「ありがとう!」 優木さんの準備していたコーヒーにミルクとお砂糖を添えて、応接スペースに持って行った。 「言ってもらえたら、こちらから取りに伺いましたのに」 「近くまで来る用があったので、お送りするよりUSBを持参した方が早いと思いまして。こちらのミスで失礼しました」 「わざわざありがとうございます」 2人の会話が一段落したようだったので、声をかけた。 「失礼します」 コーヒーをテーブルに置くと、声をかけられた。 「もしかして……柚木さん?」 顔をあげて、声をかけてきた相手を見た。 「やっぱり」 笑顔でわたしを見ている。 「ここで働いてたんだ」 「お知り合いでしたか?」 「柚木さんと僕の後輩が同じアルバイトをしていた関係で知り合ったんです。まさか会えるとは思っていなかったので驚きました」 「そうですか」 「お元気そうで良かったです。仕事があるので失礼します」 「良かったら今度ゆっくり昔話がしたいね」 会釈だけして、逃げるように自分の席に戻った。 昔話? 世間では昔話とかするもの? なんであんなに笑顔でそんなことが言えるの? わたしは、どんな顔したらいいのかわからない。
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