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「柚木ちゃん、顔色悪いけど大丈夫?」
コーヒーカップを洗っているわたしの側に、心配そうな顔をした優木さんがいた。
「これ、あげるよ。チョコレート」
「ありがとうございます」
「疲れてる時は甘いものが一番だから」
「鴨白さんは?」
「ああ、久山さんと合流して堂元不動産に行くって出て行った」
「そうなんですね」
「あのさ、今日、もう帰ったら? 6時まで僕が電話番しておくから」
「いえ、大丈夫です。チョコ食べて元気出します」
「そう? つらくなったら言ってよ?」
「はい。その時はちゃんと言います」
頭の上を優しく撫でられた。
「ごめんね、鴨白さんじゃなくて」
「なんですか、それ?」
「柚木ちゃん、ダダ漏れだから」
優木さんにそう言われて、思わず泣いてしまった。
まさかこんなことくらいで……
優木さんにわたしの気持ちが伝わるのと同じくらい、鴨白さんにも伝わればいいのに。
きっと、そんなことを思ってしまったからだ。
「ごめん、泣かせるつもりじゃなかったのに」
「優木さんのせいじゃないです」
「そうだ! あのさ、今やってる仕事、中高生を対象にしたプチプラコスメのロゴデザインなんだけど」
「優木さんがコスメのロゴやってるんですか?」
「枝間さんに押し付けられたんだ。こういうの苦手って。僕の方がどう考えても向いてないのに。そのコスメの名前が『Secret Garden』なんだよ。日本語に訳したら『秘密の園』って、なんかエロくない?」
「全然そんなこと思いませんよ」
「エロいよぉ。エロだよ。もう、そっち方向のしか思い浮かばなくて」
思わず笑ってしまった。
「良かった。笑ってくれて。やっぱりエロネタは万国共通だね」
「何ですか、それ?」
「知らない?」
「聞いたことないですよ?」
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