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ホテル
ホテルグランドロイヤルのロビーは宿泊客とレストランを利用する客とで賑わっていた。
待ち合わせの15分前には着いたものの、人が多すぎて途方に暮れてしまった。
「ロビーで」なんてアバウトなんかじゃなくて、もっと「〇〇の前で」みたいにわかりやすい場所で待ち合せればよかった。
周りを見回していると、ぽんっと肩をたたかれた。
「ソノーっ、どこ探してるの? ずっと後ろにいたんだけど?」
「ごめん、全然気が付かなかった」
「それって、わたしが太ったって言いたいわけ?」
「違うって」
「とりあえず行こう。予約とってあるから」
「キョンちゃんも好きだよね」
「ソノだって好きでしょ? あ……ごめん、今は柚木だったね」
「そんなのどっちでもいいよ。気にしないで」
「そう?」
「そう」
大学時代の友達、キョンちゃんこと、清田亜美と久々に会うこととなり、ケーキバイキングに行くことになった。
学生時代、2人でいろんなところに行ったけれど、このホテルは初めてだった。
「ここね、ストロベリーフェアの時は瞬殺で予約が終わって、とれなかったんだよね」
「そんなに人気なんだ。今回よくとれたね」
「今回は、懸賞で当たったの」
「それもすごいね」
話をしながらエレベーターで23Fまで上がると、ケーキバイキングのあるカフェの前には既に女性客がたくさん並んでいた。
オープンと同時にスタッフに案内されて席に着くと、早速ケーキを取りに行く。
ホテルのケーキバイキングだけあって、ケーキだけでなく、その場でクレープを焼いてオレンジソースをかけてくれるものや、ローストビーフやサーモンのサンドイッチまである。
迷いながら数点を更に盛って、コーヒーと一緒に席に戻ると、キョンちゃんは既に席に着いてわたしを待っていた。
「ごめん待たせて」
「いいよぉ。まずは食べようか」
「だね」
キョンちゃんがフルーツのたっぷりのったパイをおいしそうに頬張ったので、わたしも負けじと上にラズベリーソースのかかったムースを口に運んだ。
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