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3個目のケーキを食べ終えたところで、キョンちゃんはようやく目の前のお皿を少し端に寄せた。
「ごめんね、無理言って」
「なんで? 思い出してくれて嬉しかったよ」
「お兄ちゃんのお嫁さんの誕生日プレゼントが全然決まらなくて。ソノの作るアクセサリーのこと思い出して販売ページ見たら、発送が「入金から3~4日後」って書いてあったから、間に合わないと思って」
「仕事しながらだから、発送がどうしても遅くなってしまうんだよね」
「直接受け渡ししてもらえて助かった!」
わたしは持って来ていた小さな手提げ袋を渡した。
袋から小さな箱を出したキョンちゃんは嬉しそうな顔をしてくれた。
「ラッピングもかわいい」
「ありがとう」
「サイトでは見たんだけど、このオリジナルのカード、実物はもっといいね」
「それ、プロの人にデザインしてもらったから。カードに使う紙もね、絶対エンボスのにしろって言われて言うとおりにしたんだけど、正解だった」
「へぇ。やっぱり違うね」
「うん。全然違う」
「じゃあ、これ代金」
「いいよ。ケーキバイキング奢ってもらったから」
「ケーキバイキングは懸賞で当たったから無料なの。だからちゃんと受け取って。自分の価値を安売りしたらダメ」
その言葉にじっとキョンちゃんの顔を見入ってしまった。
「何?」
「同じようなことを言われたの思い出して」
「その人も、ソノのこと大切に思ってるんだね」
「……そうだといいんだけどなぁ」
「え? 『そういう人』なの? 聞かせてよ! でも待って、ケーキとってくるから」
「わたしももうちょっと食べる」
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