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頭の中で言われたことを思い出しながらマンションの廊下を歩いた。
『……どうせ、同じだったくせに』
「同じ」って何が?
今日の朝まではいつも通りだった。
何を考えてるのかよくわからない態度。
エレベーターの前まで来て、ボタンを押す手を止めた。
いつも通りだった?
違う。
どこか違ってた。
箔泉堂からコンペの結果を知らせるメールがあって、契約することになったとわかった時……あの時、嬉しそうじゃなかった。
今回は博告堂がライバルだったから、久山さんも優木さんもめちゃくちゃ喜んでいて。
でも、鴨白さんは表情を変えなかった。
箔泉堂は世界的な熊野筆のメーカーで、海外用のパンフレットなんてすごい仕事だから、その時は緊張してるのかと思ってた。
鴨白さんはこの仕事を「やってみたい」って、めずらしく何度も口にしていたし。
メールが来るまでの間に何か……
鴨白さんんは一日中会社にいて、どこからか電話がかかってくることもなくて……
もしかして……
あれを見られてて勘違いされた?
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