気持ち

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「泊っていく?」 「どうしようかな」 「前は全否定だったのに」 「進歩ですね」 言葉もなく、わたしの髪の毛を幾度となく指ですきながら、キスをくれる。 そのたびに、背中にまわした手に力を入れた。 「わたしはあなたが大好きです」と伝えるために。 その目が、わたしを見てくれているだけで、幸せで、十分だった。 「……ごめん」 さっきまでずっと浴びせていたキスをやめて、謝られた。 「……きっと、俺のことを知ったら軽蔑する」 「何を知っても、何を聞いても嫌いになったりしないのに」 「それは……どうかな……」 ただ拒絶するのじゃなくて、どうにか説明しようとしてくれているのがわかる。 でも、そんな顔をしてまで言わなくていいのに。 言いたくないことを、言わなくていい。 強気だった鴨白さんは、まるで子供になってしまったみたい。 「何か映画でも見ながら寝落ちしませんか?」 「……何を見る?」 「トランスフォーマーがいい」 「それで寝落ちは無理だと思うけど?」 「やっぱり?」 寝室の壁にかかったテレビで映画を映し出して、手をつないだ。 言っていた通り、最後までぱっちりと目を開けて観てしまって寝落ちなんかできなかった。 それで結局、電気を消して、2人で寄り添って目を閉じた。 どうか暗いところにひとりでいないで…… そう願いながら。 まだ薄暗い中、目を覚ますとベッドにひとりだった。 それでリビングに行くと、鴨白さんは仕事をしていた。 「こんなに朝早くから仕事しなくても」 「目が覚めて。もう一度寝て、起きた時にひとりだったら嫌だったから」 後ろから、ぎゅーっと抱きしめた。 「重い」 「感じ悪っ」 「邪魔」 そう言いながらも笑っているのがわかる。 ほんの少しづつでも近づけたらいいのに。
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