川上博士の発明

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 川上博士は出来上がったばかりの発明品を手に取ると、ニヤリと笑った。 「よし……ついに完成したぞ……。これは人類にとって非常に重要な薬になるはずだ」  それはフラスコいっぱいに入った赤い液体だった。  これこそ人類が長年夢見てきた薬である。  博士のこの研究所は、人気のない寂しい林の中に建っている。  そして今は草木も動物も寝息を立てる午前三時。  人々がぐっすりと眠っているこんな時刻に研究に励んでいるのは、宅配便や訪問者に研究を邪魔をされないためだ。  ここに研究所を建ててから、すでに十年の歳月が経っていた。  長年、博士が心血を注いで研究を続けてきたのは、生物の寿命を延ばす薬である。  長い時間と多額の研究費を使ってきた研究が、ついに報われる時がきたのだ。  博士はこの薬のために、子供のころから貯めてきた貯金を全て使い果たし、ほかのことにはほとんどお金も時間も費やさなかった。  世間では「変わり者」と陰口をたたかれ、近所付き合いもほとんどしない孤独な十年だったが、それも無駄とはならなかったのである。
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