川上博士の発明

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 この液体を一口飲めば、体じゅうに元気がみなぎり、本来持っていた寿命よりも一年ほど長生きできるようになる。  さらにフラスコの中身を全て飲み干せば、おそらく百年ほど寿命が延びるはずだ。 「さて、早速飲んでみるとするか……。いや待てよ……」  博士は自分の発明品には多大な自信があった。  人間や動物が飲んでみても、絶対に害などあるはずがない。  しかしだからといって、いきなり自分で飲んでみるのは躊躇われた。 「とりあえず実験動物で試してみるとしよう」  研究室の中には、実験のために様々な動物たちが檻に入れて飼ってあった。  その中に、体が弱った一匹のハツカネズミが入った檻がある。  ハツカネズミには、あまり充分な餌を与えていない。  このままいけば、あと二日か三日で衰弱し死に至ると思われる。  博士は液体の一部を小皿に移し、弱り切ったハツカネズミの前にそっと置いた。  最初、ハツカネズミは目の前の液体に興味を示さなかったが、やがて小皿に近づくと、博士の発明である寿命を延ばす薬を恐る恐る飲み始めた。  小皿の液体を半分ほど飲も干したハツカネズミ。  反応は五分ほどで表れ始めた。
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