川上博士の発明

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 力が尽き、あまり動きを見せなかったハツカネズミが、少しずつ活発に行動し始める。  目はらんらんと輝き、生気を取り戻してきたのだ。 「うむ、どうやら薬の効果が出始めたようだな」  博士は檻の前にかがみこんで、その一挙手一投足を見逃すまいと監視を始めた。  もし研究が思っていた通りに進んでいるのなら、ハツカネズミの寿命は延び、しばらく死ぬことはないのだが……。  ハツカネズミは、ついに小皿に入れられた液体を全て飲み干した。  さきほどまでの弱々しい様子は一切消え去り、今では元気に檻の中を動き回っている。 「薬の効果は予想通りのようだな。しかし、ほかの動物でもう一回試してみよう」  次はウサギの檻の前に立つ。  ウサギには餌を充分に与えていたが、一匹だけで檻に入れられ意気消沈しているらしく、隅のほうでじっとしている状態だった。  今度も同じように小皿に赤い液体を注ぎ、ウサギの前に注意深く置く。  ウサギは天敵でも見るかのように小皿を凝視していたが、何かに誘われるように小皿にゆっくり近づき、匂いを何度か嗅いでから、おもむろに舐めはじめた。
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